イエスの純福音・無教会の精髄・第二の宗教改革へ
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最終更新日:2024年12月7日
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以下の文章は、キリスト教非戦平和誌『友和』2020年5・6月号に寄稿した論考で、新型コロナ流行第1波に対する全国の「緊急事態宣言」が解除される前日(2020年5月24日)に執筆したものです(注1)。
* * * *
2019年12月に中国の武漢(ぶかん)市で始まったとされる新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナと表記)は、瞬(またた)く間にパンデミック(世界的感染爆発)となり、全世界で多くの感染者と犠牲者を出している。
日本でも2020年4月7日、全国に向け「緊急事態宣言」が発令されたが、その後、幸いにも感染者数が減少し、関西圏に続いて、残る首都圏4都県と北海道の解除が予定されている(5/24現在)。
しかし、これで新型コロナ流行は終わりではない。
およそ100年前のスペイン・インフルエンザでは、足かけ3年(1918~1920年)にわたって流行が続いた。1918年春の第1波に続き同年秋に第2波が襲ったが、このときウイルスはその毒性と感染性を格段に増し、最終的に感染者数5億人、犠牲者は数千万人と推計されている。
今回もワクチンが開発されない限り、国民の約70%が免疫を獲得する(感染する)までは、流行は収束しないであろうと言われている。世界の専門家たちは、第2波、第3波流行は必至であり、流行は1.5~2年は続くとみている。
第1波流行への対応をしっかり検証し、第2波への備えを急がなければならない。
歴史学者・哲学者のユヴァル・ハラリは、「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか-今こそグローバルな信頼と団結を」(米『TIME』誌)において、次のように述べている。
「感染を封じ込めるのに短期の隔離は不可欠だとはいえ、〔国家間に壁を築き、人の移動を制限し、貿易を減らせとの「脱グローバル化」の主張による〕長期の孤立主義政策は経済の崩壊につながるだけで、真の感染症対策にはならない。
むしろ、その正反対だ。感染症の大流行への本当の対抗手段は、〔国家同士の〕分離ではなく協力なのだ」と。
しかし、WHOを舞台にした米中の対立に見られるように、国際的な協力・協調体制は憂(うれ)うべき状況にある。
また2014年のエボラ出血熱の感染爆発の経験から分かるように、どこかの国の、たった一人の感染者の、たった1回の遺伝子変異によってもウイルスの毒性と感染性は増すのであり、その変異ウイルスの流行拡大により、全世界の人々は深刻な脅威にさらされることになる(R・プレストン著『Crisis in the Red Zone(レッドゾーンの危機)』2019年7月)。
これは、感染の拡大によるウイルス変異の機会を与えないことが全世界共通の死活問題であり、自国ばかりでなく、あらゆる国のあらゆる人々を感染から守る必要があることを教えている。
同時に新型コロナは世界と日本の諸問題をあぶり出している。
日本について言えば、今回、国民の生命よりも経済効率を優先してきた政策の結果が露呈(ろてい)した。
各種報道されたように、第1波流行で都市部では日本の新型コロナ医療(特に救急医療)が崩壊の危機に直面した。
長年にわたる医療資源削減政策のため、日本のICUベッド数はドイツの数分の一、医療スタッフの感染防護具も大幅に不足しているのである。
また、診断のためのPCR検査数も世界基準から大幅に少なく(韓国の1/10以下。発展途上国レベル)、感染者数を少なく見せようとしているのでは、と世界から厳しい目で見られている。
全国の保健所を動員しても日本のPCR合計検査数が一日7,000~9,000件程度であるのに対し、ほぼ全自動の検査機器を使い27人の職員で、一日約1万件の検査をこなしている韓国の検査施設が報道された。
なぜ安倍政権は韓国に学び、協力を求めないのか。国民の生命と、韓国と対立してきた自分たちのメンツと、どちらが大切なのか。
また、コロナ禍(か)の渦中にあるにもかかわらず、安倍政権は、検察を自分たちの都合良いようにコントロールするべく、検察官の定年を延長できるように「検察庁法」改正を画策(かくさく)した。
新型コロナの混乱に乗じて、自分たちの権力基盤強化を狙(ねら)う。火事場泥棒なみの、あきれるほどの倫理意識の低さ。
さらに特措(とくそ)法の運用や改正により対応可能であるにもかかわらず、安倍首相は、政府の独断で国民の基本的人権を奪うことのできる「緊急事態条項」規定をもうけるための、憲法改正が必要であると主張する(5/3「民間臨調」、「憲法国民の会」)。
コロナ禍を強権国家確立のために利用しようとする、民主主義理解の欠如。ドイツのメルケル首相と比較するとき、彼我の雲泥の差に悲しくなるほどである。
流行第1波対応への反省を踏まえ、我々は、次の①~⑤の方策により第2派以降に備えるべきと考える。
①徹底した政府の情報公開と政策決定プロセスの透明化による政府への信頼回復。
特に、「〔対策〕会議の議事録を残していない」(政府)などは、あってはならないことである。事後的に対策・判断の適否について検証し、将来に向けて教訓を得るためには、議事録の保存は必須である(7/31追記)。
②迅速かつ科学的な流行対策
③特に弱者保護のための徹底した救済策
④偏見・差別の排除による国民の助け合いと団結、さらに
⑤世界の国々との情報交換・相互援助に向けた協力の促進
以上により、今回のコロナ禍を日本のあり方を転換する好機としたい。さらに、発展途上国を含めた世界的な連帯と協力により、対策を前進させたい。
これはWHO(世界保健機関)が本来、目指していたものであろう。
かく言う私もまた自分なりに、与えられた持ち場で努力していきたいと願っている。
そうして何とか、今回の新型コロナの被害を最小化し、同時に、次の来るべきパンデミックにも効果的に立ち向う体制を築きたい。より良い日本と世界を築きたい。
新型コロナの流行は、私たちの抱える問題を明らかにすると同時に、私たちのあり方を問うている。
♢ ♢ ♢ ♢
注1 日本の「対策」はあまりに稚拙かつ素人的
2019年12月の中国武漢市での新型コロナ発生以来、安倍政権の対策は誤算の連続であり、流行第1波の新型コロナ緊急事態宣言に際し、補償なしの曖昧(あいまい)な自粛を要請しただけだった。
日本では、医学・公衆衛生の素人(しろうと)である首相、閣僚らが前面に立ち(元通産官僚の西村経済再生担当大臣が新型コロナ対策大臣を兼任!)、しばしば専門家の提言・警告を軽視・無視する形で、新型コロナの流行状況の判断や対策を決定した(これは、現在も変わらない)。
その結果、台湾や韓国、ニュージーランド等と比較して、日本の「対策」は、医学・公衆衛生学的にあまりにも稚拙(ちせつ)、かつ時機を失したものとなったと言わざるをえない。
一例として安倍政権は、習近平主席の国賓(こくひん)訪日延期の中国側の発表後(3月5日)になって、ようやく中国全土からの入国制限に踏み切るなどした(一方、台湾では、2020年1月から対策を始動していた)。
この間に、感染の震源地・武漢からの訪日旅行客を含め、中国全土から多くの感染旅行者が日本に入国し、これが日本の新型コロナ第1波流行の原因となった。
(注:ウイルスの遺伝子(ゲノム)解析の結果、第1波流行の前半は「武漢型」ウイルスが中心であったことが確認されている。その後、次第に「ヨーロッパ型」が増えた。)
それでも国民の多くは外出制限に積極的に協力し、流行第1波における日本の死亡者数は、幸運にも何らかの不明要因により(ファクターX:京都大学iPS細胞研究所・中山伸弥所長)、世界的に見ても少なかった。
にもかかわらず、安倍首相は、2020年5月25日、流行第1波の緊急事態宣言解除に際し、日本の死亡者数が少なかったことを自らの政策の成果であるかのように自画自賛し、「『日本モデル』の力を示せた」と誇った。
しかし、来るべき第2波、第3波で幸運が続くとは限らない。
中山教授も言う通り、今後の対策を「実態が分からないファクターXのみに依存するのは、危険」である。
付 参考データ
世界の感染者・死者数(2020年8月4日午後5時現在)
米国ジョンズ・ホプキンス大学の集計から。
国 感染者 死者
日本 4万0490 1018
台湾 474 7
タイ 3321 58
韓国 1万4423 301
シンガポール 5万3051 27
中国 8万8099 4672
チリ 36万1493 9707
メキシコ 44万3813 4万8012
ロシア 85万9762 1万4327
ブラジル 275万0318 9万4665
米国 471万7716 15万5471
*諸外国に比し、日本のPCR検査数は非常に少ない。
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