イエスの純福音・無教会の精髄・第二の宗教改革へ
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最終更新日:2024年12月7日
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* * * *
11.mRNAワクチンの仕組みと安全性
11-①
mRNAワクチンの仕組み-ウイルスの設計図の一部を投与
mRNAワクチンは、100年ぶりに開発された新しいテクノロジーによる画期的なワクチンである。
95%という有効性および安全性の高さに、世界中の研究者たちが驚いている。
しかし開発の裏には、ハンガリーのカタリン・カリコ博士の40年にも及ぶ、不撓(ふとう)不屈の基礎研究の蓄積があった。
彼女はノーベル賞の有力候補と目されている。
このワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)表面の突起(スパイクタンパク質。細胞表面のACE2と結合して感染を成立させる)の設計図(mRNA)をウイルス遺伝子から抜き取り、これを人工的に合成し、脂質の膜で包んだものである。
このワクチンを筋肉内に注射すると、筋肉細胞内でウイルスの突起部分だけが作られ、筋肉細胞から放出される。
これを身体が「異物」として認識し、抗体が作られる(→抗体が侵入ウイルスの突起に結合し、感染成立を阻止する。液性免疫と呼ぶ)と共に、キラーT 細胞が誘導される(→感染した細胞ごと破壊する。細胞性免疫と呼ぶ)。
さらに記憶TおよびB細胞も誘導され、これによってウイルス感染を長期的に防ぐための免疫記憶が確立される(注1)。
なおmRNAワクチン接種が遺伝子DNAに影響を及ぼすという懸念は、ないと考えられている。
その理由は、以下の通りである。
接種により投与されたmRNAが遺伝子DNAに影響を及ぼすためには、投与mRNAにより次のような過程が引き起こされることが必要となる(愛媛県立医療大学 大学院保健医療学研究科特任教授・井出利憲著『分子生物学の基本としくみ 第2版』秀和システム、2015年、255項参照)。
つまり、
ⅰ.投与されたmRNAが体内(細胞内)に長期間とどまること(mRNAの体内残留)。
↓
ⅱ.細胞内において、投与されたmRNAから新たにDNAが作られること(逆転写)。
↓
ⅲ.新たに作られたDNA断片が、ヒトの遺伝子DNAに組み込まれること。
ワクチン接種により被接種者の体内で上記の過程が起こり、RNAが遺伝子DNAに影響を及ぼすならば、被接種者に何らかの影響が表れ、またその影響が、新たに生まれる子孫に遺伝的に引き継がれる可能性が生まれる。
では実際に、接種により投与されたmRNAに、この懸念はあるのか、無いのか?
この点に関しては、まず動物実験により、mRNAは体内でスパイクタンパク質を産生した後、急速に分解され、約20分後には物質としてのmRNAは半減し、投与から10日後には検出されなくなることが確認されている。
また体内でmRNAをDNAに変換するには特殊な酵素(逆転写酵素)が必要であるが、この酵素は基本的に、ヒトの体ではほとんど発現することはない。
さらに、仮にmRNAからDNAが作られたとしても、それを遺伝子DNA鎖に組み込む酵素(インテグラーゼ:integrase)がヒトにはない。
以上の事実より、mRNAワクチン接種が遺伝子DNAに影響を及ぼす懸念はないと考えられている。
(2/4 愛知県医師会主催「新型コロナウイルスワクチン研修会」詳報2、講師・峰宗太郎、米国立研究機関・博士研究員)
②mRNAワクチンの安全性・副反応
②-ⅰ
mRNAワクチン(ファイザー社製やモデルナ社製)は、インフルエンザワクチンなどと比べて副反応の頻度は高いが、通常2~3日で軽快することが確認されている。
アナフィラキシーショックなど重篤なものは、極めてまれである。
ワクチン接種の大きなメリットと副反応の程度・頻度を比べる(天秤にかける)と、例外を除いて、接種をためらう必要はないと考えられる。
②-ⅱ
具体的には、接種部位の痛み・腫れが多く、また全身症状として筋肉痛、頭痛、悪寒、発熱・だるさなどがある。
副反応は2回目の接種後に、若い人で多く見られる傾向がある。
発熱に関しては、接種翌日に38℃台の発熱し、1~2日続くことがあるが、これによる重篤な障害は発生していない。
発熱対策として、接種後1~2日のワクチン休暇取得が勧めらる。
なお寝たきりの高齢者等では、発熱により脱水等を起こし、全身状態が悪化する場合も想定されるので、注意が必要である(ただし接種せずに新型コロナに感染すれば、死亡する可能性が非常に高い)。
疼痛・発熱に対しては鎮痛解熱剤のアセトアミノフェン(カロナール、市販薬「タイレノール」)が比較的安全に使用可能であるが、薬剤による喘息(ぜんそく)やアレルギーのある人は、事前に主治医に相談することを勧める。
②-ⅱ
アナフィラキシー・ショック(急激なアレルギー反応による血圧低下等)は、重篤な副作用の一つであるが、発生率は約20~30万人に1人とされている。
その90%が接種後30分以内に発生している。
若い女性に多く、過去にアナフィラキシーの既往のある人や薬剤アレルギーのある方では、注意が必要である。
なお64歳以上では、アナフィラキシー・ショックほとんど認められていない。
ちなみに医療従事者の先行接種時にアナフィラキシーを起こした人で、国内の死亡例はない(抗アレルギー剤の注射や太ももへのアドレナリンの筋肉注射等の処置を行う)。
②-ⅲ
また接種禁忌(ワクチンを接種できない人)は、現時点では、
①ワクチンの成分でもあるポリエチレングリコール(PEG)アレルギーのある人(PEGは、化粧品や薬剤のコーティング等に多く使用)と、
②mRNAワクチン接種後にアナフィラキシーを起したことのある人である。
なお、このmRNAワクチンは、数十年という基礎研究の蓄積があって初めて、開発された新しいワクチンである。
現在までのところ、特異的かつ重大な副反応は報告されていないが、未知の部分も多い(英・アストラゼネカ製のベクターワクチンでは、英国で接種者約25万人に1人の割合で血栓症を認め、そのほとんどが60歳未満の女性と報告)。
今回、パンデミック下で緊急の使用開始となり、全世界ですでに約20億回接種されているが、今後ともmRNAワクチンの副反応や安全な使用法について、調査・研究の蓄積が求められる。
12.感染抑制が社会の命運を握る-危機管理の視点から
12-①
先に倉橋教授の「シミュレーションは必ずこうなるという決定論的なものではない」との言葉を引用したが、危機管理の観点からは、最悪の事態を想定して備える必要がある。
もし新型コロナ対策の不備により、インド株等による流行第5波を招き、しかも冬にかけて大流行したら、日本社会はどうなるか。
12-②
5月末になっても第4波は依然として続き、政府は緊急事態宣言の延長を決定した。
これに伴い各業界の営業活動制限が継続されることになったが、一方でデパートや映画館、テーマパークなどからは、6月からの営業再開の表明が相次いだ。
これは、度重なる緊急事態宣言と休業要請の長期化により、各業界の体力が限界に近づきつつあることの表れであろう。
苦境に耐えられず営業継続を断念して、シャッターを下ろす店舗も日々、増加している。
失業、雇い止め等により経済的な苦境に立たされている市民の数も、膨大(ぼうだい)となりつつある(4月の完全失業率2.8%、完全失業者数209万人。総務省発表)。
12-③
今後も新型コロナの大流行が繰り返されるならば、単に多くの人命が失われるだけでなく、種々の社会システムは大きく損傷し、人々の前には荒涼とした光景が広がるのではないか。
日本社会は長期にわたって沈み、再び浮かび上がれなくなるのではないか。
このように新型コロナは、もはや単なる個人の問題の域を超え、社会や共同体の命運を握る問題となりつつある。
私たちは個人として、また共同体の一員として新型コロナとどう向き合うのか。将来世代にどのような社会を残すのか。
私たちは、大きな問いの前に立たされている。
13.さて、ワクチン接種をどうする?
13-①
以上、私たちは新型コロナ流行の諸相、ワクチン接種をめぐり可能な限りデータに基づき事実関係を確認してきた。
残された問題は、「自分(たち)はどう行動するか」である。
新型コロナ流行を阻止しない限り、個人としても社会としても、また次世代に対しても甚大な災禍を残すことは明白である。
一方、mRNAワクチンの高い有効性、集団免疫・流行阻止効果は、先行するイスラエルや欧米諸国の経験や各種研究データから明らかであろう。
この問題に対する筆者の結論は、別稿「新型コロナワクチン接種の副作用について」で述べたとおりである。
13-②
「私は、〔この mRNA〕ワクチンは〔新しいものですので、〕全く安全という立場も取りません。
ワクチン接種の進展(接種人数の増加)と共に定期的に副反応情報も更新されていきますので、〔データベースで〕これらを確認することが大切です。・・・
13-③
たちは現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の根本治療薬がない中、パンデミックという緊急事態のただ中にあり、しかも世界的な流行が続く限り今後、より悪性度の高いインド変異株の流行や、その後の新たな変異株登場の可能性まで想定する必要があります。
このような状況を踏まえた上で、マイナスとプラスを秤(はかり)にかけると(どこまで行っても、人間が行うことに「完全」はありません)、私は、できるだけ早く、一人でも多くの国民が予防接種を済ませることがとても大切だと考えています。
現在の自分と家族(変異株では一人から家族全員に感染し、30代、40代でも重症化します)と社会を守り、その結果として次の世代に壊れた社会を残さないために」。
13-④
最後に、mRNAワクチン開発の立役者カタリン・カリコ博士と、京大iPS細胞研究所・中山伸弥教授(2012年ノーベル医学・生理学賞)の言葉をもって、本論考の結びとしたい。
(5/27クローズアップ現代+「新生ワクチンは世界を救うのか!? 開発の立役者カリコ博士×山中伸弥が迫るいま“知りたいこと”」より)
「私たちの研究は先人たちの成果の上に築かれたものです。私は、多くの科学者の研究に助けられてきました。・・
〔mRNA〕ワクチンはパンデミックを止め、私たちは以前に近い生活に戻れるでしょう。・・
接種が進んだ国では普通の生活に戻りつつあり、〔mRNA〕ワクチンの効果は確認されています。
もうしばらく注意深く過ごさなければなりませんが、希望を持ってほしいです」(カリコ博士)。
「〔mRNAワクチンは、〕確かにインフルエンザワクチンに比べると発熱、倦怠感などの頻度が高く、特に2回目の〔接種〕後に数十%〔約40%〕の人が、こういう副反応をおぼえるようです。
しかし1~2日でおさまることが、全世界で1億回以上、接種されて証明されています(注2)。
副反応に比べて効果が絶大ですので、副反応を恐がらずに、できるだけ沢山の人にできるだけ早く接種を受けて頂きたいと強く願っています」(中山教授)。
おわり
〔 〕内は補足
♢ ♢ ♢ ♢
注1 mRNAワクチンについて
☆日本RNA学会飯笹久「mRNAワクチン:新型コロナウイルス感染を抑える切り札となるか?」へ
注2 世界全体の累計接種回数
世界全体の累計接種回数は、2021年6月2日までに19億7672万回を超えた。
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